阪口さんの好きな人

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「…亜佳梨。ボーイフレンドって誰だ? どういうことだ?」 お父さんと、それにお母さんも不思議そうな顔で聞いてくる。 2人とも大野くんに気づいていなかったみたいだ。 非常事態だったとはいえ、わが両親ながらちょっと抜けている。 「…亜佳梨ちゃんのクラスメイトらしいよ。2人が来るまで亜佳梨ちゃんに付き添ってくれていたんだよ」 長居さんが2人に答えてくれた。 「まあ、それならきちんとお礼を言いたかったわ。…帰ってしまうなんて残念ね…。 亜佳梨、どんな子なの? 今度、紹介してちょうだい。お礼をしないと」 「…え、えーと…」 「なかなかの男前だったよ。 見た目はちょっとバンカラだけど、今時の子にしては礼儀正しい感じだったなあ…」 なぜかどんどん答えてしまう長居さん。 ていうか、バンカラって何だろう。 「あらあらあら。亜佳梨ったら奥手だとばっかり思っていたけど、しっかりしてるじゃない。 ね、今度おうちに連れてきなさいよ。絶対よ」 「…やめないか。 いくらおばあちゃんが大丈夫だったとは言え、病院でする話じゃないだろう。 さ、亜佳梨。お前は母さんと長居さんと一緒に家に戻りなさい。 おばあちゃんには、今夜は父さんがついておくから」 「…そうね。ごめんなさい、あなた。ありがとうございます。 じゃあ、亜佳梨。今度、おうちでゆっくり聞かせてね。亜佳梨の彼氏のコト」 「母さん!」 お父さんの不機嫌な声が廊下に響いた。 「…か、彼氏じゃないよ。友達なの…」 私は口ごもるようにそう呟きながら、ずっと大野くんからのLINEを見ていた。 ―――そう。 大野くんは友達。 優しくて、いつも真面目で、純粋な。 私の大切な友達。 そして、 私の―――――………。
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