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色々あった、阪口さんとの動物園から約2週間後。
俺は、彼女のおばあさんのお見舞いに訪れることになった。
――きっかけは2日前。
阪口さんからLINEが入り
すっかり元気になったおばあさんが、俺にお礼を言いたがっているから、良ければ会いに来てほしい…と頼まれたのだ。
お礼を言われるほどのことはしていないけれど、機会があればおばあさんのお見舞いをしたいと思っていたので、二つ返事で了承した。
そんなわけで、土曜日の昼下がり。
中央町の駅前で阪口さんと待ち合わせをして、病院に向かうことになった。
少し早めに着いた俺は、待ち合わせにうってつけの大きな犬の像の前で阪口さんを待つ。
手にはお見舞いの花束。
手ぶらはダメだろう、でも何を持っていけばいいだろうと散々悩んだ結果、無難な花に落ち着いた。
…のは、いいのだけど。
男が1人で花束抱えて駅前に立っているというのはなかなか物珍しいらしい。
道行く人々がチラチラ視線を寄越してくる。
特に同世代の女子らしき集団なんて明らかに俺を見て笑っているし。
…阪口さん。
早く来てくれ。
「……大野くん!」
「…!」
見せ物になること5分弱。
待ち焦がれていたその人が姿を現した。
長い髪を、天辺に結い上げて団子頭にししている阪口さん。
それだけでいつもと雰囲気が全く違っている。
もちろん、めちゃくちゃ可愛い。
可愛すぎて、一瞬言葉を失ってしまったくらいだ。
(なんで阪口さんって何をしても可愛いんだろうか…)
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