大野くんの失敗

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「……おれのことより、2人はどうしたの? 診察じゃないよね。お見舞い?」 「あ、は、はい。実は私のおばあちゃんが入院していて…」 「え、そうなの。……大変だね」 「いえ、もう大丈夫です。軽い心臓発作だったんですけど、すっかり回復して、来週には退院なんで…」 「……そう。それなら良かった」 『心臓発作』と聞いたとき、花倉さんの表情が少しだけ強張ったように見えた。 でも、阪口さんは何も気づかなかったみたいだし、当の花倉さんもニッコリ笑って『それじゃあ…』と待ち合いの方に戻っていったので、俺は何も言わなかった。 …それにしても こんなところで会うなんて思わなかった。 正直に言うと、花倉さんには僅かではあるもの苦手意識が残っている。 多分、その理由はあの人も阪口さんに気があるように見えること。 もちろん、本当のところはわからないけど。 (……嫉妬とか……カッコ悪いな、俺……) 阪口さんには聞こえないように、小さくため息をついた。 * * *  おばあさんが入院しているのは5階にある4人部屋。 始めは個室だったらしいのだが、今週の頭に大部屋に移動になったらしい。 もっとも、同室の人の移動や退院で、今はたまたまおばあさん一人しか部屋を使っていないとのことだ。 「…だから、あんまり気を使わないでいいからね」 阪口さんはそう前置きして、病室の扉を開けた。 まず目に入ったのは、カーテンで仕切られた4つのベッド。 そのうちの3つはカーテンが開かれ、無人であることがすぐにわかった。 阪口さんの言う通りだ。 唯一閉まっているのは、部屋の奥の窓際のもの。 阪口さんはそこに行くとカーテンを開き『おばあちゃん、来たよー』と声をかけた。
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