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それから20分くらい3人で話して、
もう少ししたら、ゲートボール仲間がお見舞いに来ると言うので、俺たちはおいとますることにした。
「…じゃあね、おばあちゃん。また明日も来るからね」
「はいはい。ありがとう。
大野くん、今度は退院したあと、家に遊びに来てね」
「あ、ありがとうございます」
最後まで優しいおばあさんの笑顔に見送られ、俺たちは病院を後にした。
* * *
「大野くん、今日は本当にありがとう」
「…いや。俺も、お見舞いに行きたいと思ってたし…。
おばあさん、元気そうで良かった」
「うん。もうすぐ退院出来るの。
しばらくは無理できないけど…。でも、…本当に良かった…」
阪口さんは心から嬉しそうに笑っている。
…その笑顔に、何だかじんときてしまった。
おばあさんも阪口さんも、本当に互いを大切に思っているんだな。
――――『寂しい』って言うのが苦手みたいで
ふいに、おばあさんの言葉が思い出された。
確かに、阪口さんはふわふわしている割に、あまり甘えた雰囲気は感じられない。
むしろ、一人で抱え込む方だ。
日直の仕事も、どんどん自分だけで片付けてしまおうとしていたし。
それは、片割れである俺にビビっているからだと思っていたけれど
それだけじゃないのかもしれない。
(…俺は、なれるんだろうか。阪口さんが甘えてきてくれるような男に…)
少なくとも、今のままでは駄目だろう。
俺の強さは虚勢でしかない。
もっと、本当に強くなりたい。
彼女を守れるように。
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