阪口さん、秘密を知る

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「…あー、亜佳梨ちゃん、いいじゃない。可愛いよ!」 「…そ、そうですか? なんか、普段着ないから変な感じです」 「いやいや、似合う。 亜佳梨ちゃんは髪が黒くて綺麗だから和服がよく似合うよ」 「ありがとうございます、松屋先輩」 大野くんがお見舞いに来てくれたときから、早1週間。 10月も終わろうとしている晩秋のある日。 放課後の茶道部部室は、珍しく賑やかだった。 「やっぱり着物を着るといいねー。茶道部も華やかになるもん」 「ね、この帯、派手じゃないかな」 「松屋さーん、こっちも手伝ってー」 「はーい!」 普段、幽霊部員の人も、今日は集まってはしゃいでいる。 みんな、着物を着せてもらったり、髪型をいじってみたり、はたまた自分の姿を写メに撮ってみたり。 普段からは想像できない華やかさだ。 ちなみに、私も例外でなく着物姿。 髪もアップにまとめている。 鏡に映る自分は、いつもと少し違って見えて、なんだか照れ臭い。 …実は、あと1週間でうちの学校の学園祭。 茶道部は、本日そのリハーサルというわけだ。 なのでいつもは部活に来ない先輩も、このときばかりは立派な茶道部員。 本番さながらに着物に身を包み、順番に茶を立てていく。 「…うーん、上手くできますように…」 あくまでリハーサルだから緊張する必要はないのかもしれないけど 初めての本格的な茶席に、かなりドキドキしていた。
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