阪口さん、秘密を知る

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「…あ! 花倉くん、また亜佳梨ちゃんを口説いてるー」 からかうような声があがり、着付けをしてくれた松屋先輩が抱きついてくる。 松屋先輩は、冗談っぽく私に頬擦りをした。 「花倉くん、最近亜佳梨ちゃんばっかりじゃない? 特別扱いしてる感じー。 あやしーなー」 「ま、松屋先輩…」 「何があやしいの。真面目に部活に来てくれるのが阪口さんしかいないから、そうなるんじゃないか。 …ねえ、阪口さん?」 「え、は、はあ…」 …そんな答えにくいこと聞かないでください。 他の部員の手前、ハッキリ肯定するわけにもいかず、曖昧にうなずいた。 花倉先輩は、私を見ながらふっと目を細める。 「…でも、阪口さんが特別なのは、当たってるけどね」 …え? 「えー!! 何それ、花倉くん、どういう意味ー?」 「別にー。そのままの意味」 花倉先輩は、普段の笑顔と違い、悪戯っ子みたいにあどけなく笑うと、他の部員の輪の中に入っていってしまった。 残された私は呆然とするだけ。 「亜佳梨ちゃん、今のどういうこと? 花倉くんと付き合ってるの?」 「ま、まさか…! ないです」 松屋先輩が興味津々という感じで詰めよってきて、私は慌てて首を振る。 松屋先輩は、面白いスクープを掴んだとばかりに興奮ぎみだ。 そんな私達の様子に他の部員も『どうしたの』と集まってきた。 「あのさー、今花倉くんが亜佳梨ちゃんにー……」 「えー!」 「なにそれ、告ってんの!?」 「いいなー、うらやましい!」 「あかりん、付き合わないの?」 「付き合っちゃいなよー!」 「……ないです! あ、わ、私…ちょっとクラス展示の方を見てきます! 自分の茶席までには戻りますから…」 …もう。 どうしてこんなことになっちゃうの。 松屋先輩たちの一足早いお祭りから逃げるように、部室を飛び出した。
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