阪口さん、秘密を知る

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教室の前につくと、奇妙なものを見つけた。 扉のそばに、折り畳まれた黒い布が、数枚重ねて置かれている。 「………?」 思わず手に取って、しげしげと眺める。 …暗幕だ。 演劇部なんかがよく使っているのを見る。 その名の通り、真っ暗な布は綺麗に縫い合わされ、かなりの大きさになっていた。 それが…6枚。 教室の壁を全ておおってしまえるくらいの量はあるだろう。 「…うーん…」 これが暗幕だということは、わかった。 わからないのは、なぜここにあるかということ。 落としたにしてはあまりに整然と置かれていたし、わざとここに置いておく理由も思い浮かばない。 「…ま。いいか」 うちの教室の前にあるってことは、うちが使う可能性が大きい。 クラスメイトに聞いたら何かわかるかもしれない。 私は暗幕を抱える…のは重かったので、とりあえずそのままにして教室に入った。 「…あ、亜佳梨ー! 着物じゃん!」 「わあ、可愛い。いいなー、茶道部、こんなの着られて!」 入って早々、クラスの女子が私の格好に注目する。 寄ってきて、前や後ろから全身を観察するように眺め回された。 …ちょっと恥ずかしい。 「あははー。慣れない格好してるから、ちょっと苦しいよー。 …ね、クラスの方は調子どう?」 注目をそらそうと進捗を尋ねると、クラスメイト達は顔を見合わせる。 心なしか、困ったような表情だ。 …今、ここに残っているのは10人程度。 模型を組み立てたり、色を塗ったり、はたまた大きい画用紙に星座のイラストを描き込んだりしている。 その中に、やっぱり大野くんの姿はなかった。
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