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「…どうしたの、作業遅れてるとか?」
「ううん。作業自体はいい感じなんだけどー」
クラスメイト達は少し口ごもるように答えたあと、『暗幕がね…』と付け足した。
「暗幕がどうかした?」
「うちのクラス、テーマが宇宙じゃん?
だから教室を暗幕で包んで、星空みたいな装飾をしようと思ったんだけど、実行委員が申請を忘れてて、暗幕借りれなくなっちゃったの」
「…え?」
「それで、さっきまで部活がない子達で、どうにか出来ないか話し合ったり、色々頼みに行ったりしたんだけど、上手くいかなくて…
暗幕使わない飾り付けに変えようかと思うんだけど、なかなかいいのが思い付かないんだよねー。
明日のホームルームで話し合おうかな…」
「……………」
疲れたような表情でため息をつく、みんな。
きっとどうやって暗幕抜きで展示をしようか、頭を悩ませているのだろう。
だけど私は1人、全く違うことを考えていた。
「…亜佳梨、どうしたの? すっごい不思議そうな顔してるけど」
「……暗幕、あったよ?」
「「「え!?」」」
クラスにいた全員の声がハモる。
こっちに背を向けて作業をしていた男子も、手を止めて私を振り返った。
「ど、どこにあったの!?」
「教室の前、畳んで置いてあった」
扉を指差しながらそう言うと、私としゃべっていた数名の女子が、その方向へと一目散に駆け出した。
「あったーーー!」
すぐに響き渡る、驚愕とも歓喜ともとれる悲鳴。
やがて、彼女達はそれぞれが暗幕を抱えて戻ってきた。
「ほら、見て! あったよ! ちょうど必要な枚数ピッタリ!
多分、うちのクラスが使って大丈夫だよ」
「え! なんで!? 誰が持ってきてくれたの!?」
「わかんないけど…。さっき一緒に話し合いしてくれた誰かじゃないかな。
きっと、諦めようってなったあとも探してくれたんだよ。いいじゃん、それは明日にでもみんなに聞いてみたら。
これで予定通りの展示が出来るよ。良かったー!」
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