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本当に安心したみたいにはしゃぐみんなを見ながら、私はある疑問を抱いていた。
この暗幕、置いたのは誰なんだろう?
どうして何も言わずに置いて行ったんだろう?
さっきまで一緒に話し合いしていたメンバーなら、一言くらい声をかけるんじゃないだろうか。
…それとも
声をかけられない理由があるんだろうか。
「…あ、あのね、大野くんって手伝いに来てたりする?」
「…は? 大野くん…!?」
クラスメイトの1人に尋ねると、驚いた…というより、引いたというような表情で首を横に振られた。
「来るわけないじゃん。あの人、学園祭なんか興味ないでしょ。
ていうか、手伝われても困るよ。キレられたりしたら恐いし、仲間のヤンキーとか学祭に来られたらヤバイじゃない」
「………お、大野くんはキレたりしないと思うけど……」
「はあ? どうしちゃったの、亜佳梨。
変なこと言わないでよ。あの人は、本気で関わんない方がいいんだってば」
「…………」
駄目だ。
私が何を言っても通じはしない。
多分、他のみんなもこんな感じだろう。
仕方なく、反論を諦めて黙る。
クラスメイトの大野くんへのこの反応は、今に始まったことじゃない。
いや、クラスだけでなく学校全体が大野くんへはこういう認識だ。
…私だって最近までは、ここまで激しくはなかったけど、彼が恐かったし深く関わりたくないと思っていた。
喧嘩沙汰ばかりしている不良だと、敬遠していた。
だからみんなの気持ちもわからなくはない。
―――でも…
でも、大野くんは本当は……
「…ね、作業が順調なら、私…茶道部に戻ってもいい?」
「…うん、もちろん。こっちは本当に大丈夫だから、部活頑張りなよ」
快く送り出してくれるクラスメイトにお礼を言って、私は教室を後にした。
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