大野くんの葛藤

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********** ―――次の日。 朝から、非の打ち所のない晴天だった。 空は青く澄みきっているし、風も最近の残暑が嘘みたいに爽やかで清々しい。 まだ低い陽射しが、木々の緑の隙間からこぼれ落ち、地面にゆらめく影絵を浮かび上がらせている。 時折耳に入る鳥のさえずりも、心なしか浮かれているように思えた。 …そんな気持ちのいい朝なのに。 通学路を行く、俺の足は重い。 (…ほとんど眠れなかった…) 阪口さんに告白したことを思い返し、今さらのように照れくさくなり、これからの不安にため息をつく。 膨らむ後悔と、それでもわずかに残る期待と達成感。 そんなもので一杯になった俺は、まともに睡眠を取ることも叶わず、昨夜は布団の中でゴロゴロ転がり回っていた。 …我ながら、情けない。 (…しっかりしろ。昨日、天満とも話したじゃねえか。勝負はこれから。 阪口さんに、きちんと俺のことをわかってもらうんだ…) 小さく拳を握り、気合いを入れ直すと、遅刻ギリギリでほとんど人のいない校門をくぐる。 あまり混み合う時間だと、俺を見て怯えたり、噂話をしたりするやつがいるので、なるべく遅くに登校するようにしている。 だから、大抵、下足場にはクラスメイトは誰もいない。 …はずなんだが。 「…ひゃっ!」 短い、驚いたような声。 綺麗な黒髪をなびかせながら、ひとりの女生徒が、下足場にやって来た俺を見て身体を震わせた。 それは俺の寝不足の原因… (…ささささささ阪口さん…!)
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