阪口さんの逃亡

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(…私の馬鹿…) 遅刻寸前で教室に駆け込んだ私は、そのままヨロヨロと席にたどり着く。 椅子に座ると一気に疲労感が襲ってきて、そのまま突っ伏した。 同時に、耳に響いてくるチャイム。 本当に、遅刻ギリギリだった。 こんなのは初めてだ。 ―――昨日は、ほとんど眠れなかったから。 眠ろうと目を閉じると、大野くんのことばかり考えてしまって。 真剣な眼差しや、少し怒ったような声。 そして、…あの言葉。 『…俺と付き合わねえ?』 その台詞が頭の中で響くたび、どうしょうもないくらい胸が苦しくなって、同時に焦りを感じた。 大野くんの想いにどう答えればいいのか 何より私はどう思っているのか しっかり考えないと。 でも、あまり大野くんを待たせてはいけない。 そんな風に思うたび、胸の中が私をせっつくように暴れだした。 ドキドキと激しい鼓動。 あまりに胸が騒ぐから、この苦しさが緊張からか、焦りからか…それとも違う『何か』が理由なのか、わからなくなっていく。 ただ、大野くんのことだけを考えながら夜を過ごしていた。 …結局、睡眠を取れたのは、空が明るくなってきてからのわずかな時間だけ。 私は何年ぶりかの寝坊をして 高校入学以来初めての、ギリギリ登校になってしまったのだ。 大野くんへの気持ちはわからないまま。
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