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「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
炎の燃え盛る道に、たった一人 息を切らしながら走る少年の姿が見える。
「くそっ!誰か生きてないのかよ!」
頬を伝う涙をぬぐいながら、ただひたすら走る。
「ふざけるな…。ふざけるなよ!何で……何で……、誰がこんなことを!」
体が焼けるのにも、煙を吸って肺がボロボロになるのにも関わらず、少年はただただ走り続ける。
しとしとと弱い雨が降っているが、村を焼く炎の勢いはいっこうに収まらない。むしろ雨に含まれるマナを吸収し、勢いを増しているようにも見える。
「はぁっ、はぁっ……うわっ!」
瓦礫につまずいて転んだことで、少年はようやく動きを止めた。
「うっ……うっ……。何でみんな死んじゃったんだ…!僕だけ生き残っていたって意味ないだろ!…父さん、母さん…、みんな…。やだ…やだよ……!みんなのいない理不尽な世界に僕が生きていける訳ない。死にたい……死にたいよ…。
…呪ってやる……。理不尽な世界も、僕の運命を決めた神も…!呪われて滅びてしまえ!!」
拳を地面に叩きつけ、嗚咽混じりの声で叫ぶ。
やがて少年は涙のせいか煙のせいか、はたまた眠気のせいか目を開けているのが億劫になってきて、静かにまぶたを閉じた。「このまま死んでしまえたら…」と淡い期待を抱きながら。
「…………」
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