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空の傷は、太陽光線が壁にうつし出した反射光だった。
圧倒するような巨大な壁の高さは、世界一高いと謳われる中東の超高層ビルを思い起こさせた。
ビルの高さは、1000メートルを超える。
それに匹敵するのではないかという巨大な壁という壁が、東西南北、ぼくを中心に取り囲むようにして存在していた。
いったい誰がこんな巨大な壁を?
というよりも、なぜ自分がこのようなところに?
という疑問の方が先だった。
ここが夢の世界だろうが現実だろうが、今はどっちだって良い。
夢は覚めないと夢だと分からないのだから。
それまでは夢の世界もまた、現実かもしれない。
ぼくは落ち着きを取りもどすために、大きく深呼吸をした。
巨大な白い壁が反射板の役割をはたし、朝の太陽光が周囲の壁へと拡散した。
辺りはまだほんのり薄暗かったが、様子をうかがい知ることができた。
林が見えた。小高い丘もある。
どこかで、水の流れる音が聞こえた。
そして、壁に覆われた狭い空を見上げて、ひとつ、気づいたことがあった。
空の型だ。
「空が、六角形の型をしている」
薄紅色に染まった雲と蒼い色の空が、限られた六角形の空の中で勢力争いをしていた。
白く塗られた壁のせいで、それほど圧迫感はない。
どこまでも地平線がつづいているように錯覚した。
壁までの距離はそう遠くはない。
3分ほども歩けばどの方角の壁にでも辿り着けそうだ。
ぼくは壁に向かって、歩き出した。
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