第1章

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「前に言ってなかった? あの人かっこいいねって。あれきり夕子のそういう話聞いてないんだけど」  身に覚えのない話をされて足が止まる。  立ち止まって、後ろを歩いていた彩菜に顔を向けると真剣な顔をしていた。 ああ、この顔で勉強しているんだろうなと場にそぐわないことを思うわたし。 「ほら、廊下歩いてた時に急にそう言ったじゃん。私は顔見れなかったけどしばらくその話しかしなかったでしょ」  熱しやすく冷めやすいわたしの記憶はおぼろげで、そうだっけ?と首を傾げる。  そんなわたしを呆れたように見て、まあいいや、と首を振ってわたしを追い越して前を歩いて行った。
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