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本当は覚えていた。
はりねずみみたいな髪の毛と眉間に寄った皺が印象的だったその人。
名前も学年すらも知らない一度だけすれ違った人。
熱しやすいから一目惚れだなんだと騒いでおいて、冷めやすいから騒いだ三日後にはその人の存在すら忘れかけていた。
思い出したわたしにも、その時のわたしが考えていたことが分からない。
それはもう憶測の世界。
自分のことなのに自分で管理しきれない記憶という、暗い押入れのような場所。
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