第1章

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「距離かい。速さじゃないのね。速さのほうかと思って一瞬凄いと思った私を返せ」 「はい」  右手を差し出す。 「はい、ありがとう。じゃないわ! なにやらすの」 「勝手にやったくせに……」  そう言うと、背中をばしんと叩かれた。 叩いた本人はニコニコ笑っている。悪意のなさそうな笑み。  痛い、と小さく抗議すると、本当に不思議そうに首を傾げられた。 と同時に、チャイムが鳴って、がやがや騒がしかった教室の中で大移動が始まる。 一時限目は数学らしく、教科書を持っていなかったわたしは廊下に出てロッカーの中を漁る。
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