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「相変わらず、俺と同期で副局長のくせに毒舌さは直らねぇな。蛇野郎」
「はは、蛇ですか。私は蛇のようにしつこい人間ですからねぇ……
オルガ局長、まだ悩んでいるんですか?
国の王が決めたことは私達には逆らえませんよ。下の部下たちも納得してるものもいます。
例え貴方の元を離れる日が来ようとも、真の心はいつも貴方に忠実でこの国を守るために、剣を抜くことに変わりません。
だから……」
まるで蛇、は兎のように丸く収まった瞳で言葉を濁す。
その濁した言葉に、オルガは悲観的な表情を見せ、首を横に振る。
そこに、少しの沈黙はあったが、まるで牙を抜かれた獅子を撫でるように蛇が口を開く。
「私は、両親がいなくこれまで一人できた。
そんな私に、オルガ……君がいく宛もなくさ迷ってた私に手を差しのべてくれた。
あのときの君は、天使とはほど遠い、獅子のように凛として、たくましく、勇敢さが全てのものを立ち上がらせてくれたんだ。
私は、オルガのようになりたく必死に追い付こうとした……結果、齢16で国家警察の副局長まで上り詰めた。
だが、次は私がオルガを救う番だ。
私は、違う形で国を、
オルガ……君を守ると誓う」
「ウィエル……そうか、もう俺が何を言っても変わることはないんだな?違う形で国を守るか。
この国のいく末は、まだ混沌としている。
騎士と警察が共に力を合わせ、剣を抜くのが当たり前になっているかもしれない……が、お前は他の道で違う形で守るといった……
俺はそんなお前が誇りだよ。
ありがとう、ウィエル」
「グラッツェ、オルガ……また会う日まで」
ウィエルは敬礼をし、胸の勲章をオルガに手渡しその場から姿を消した。
雲は段々と青い空を囲み、やがて夜が来る。
そして、一人の幼い子供の影がローマの街を閑散に訪れる。
真っ黒の衣を纏い、薄い唇からは人間のものとは思わぬ尖った八重歯が覗く。
「さぁ、神の裁きの時間だ」
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