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「なにが、国家のためだっ!」
時は、17世紀イタリア・ローマのある宮殿で獅子のような怒鳴り声が鳴り響く。
あきれた顔で、獅子の手前でティーカップを片手に美しい容貌を揃えた、栗色の髪を巻いた幼い少女がため息を吐いて、落ち着いた声をかける。
「オルガ・ルシス……これは命令ですわ。
これは私の意思だけではなく、
国々の王が定めたのです。
ここ最近、国は安泰へ進んでいると見えます。
ですから、これからは国中の警察の人数を絞り、
その分を国に何ができるかを考える方針です。」
「フィラン皇女、それは本心か?」
厳つい顔で、ドレッドロックス(※互いに絡まり合ってロープのような束形状の髪型)の髪を1本に束ねた若い男が、煙たそうに口を尖らせる。
衣は全身黒で、胸には星形に切り取った勲章が一段と目につく。
それは、警察のなかでも最上級にあたる者にしか身に付けることがないもので、
この男はまだ若いが腕は確かなものだと、噂では名が知れ渡っているのをよく耳にする。
「本心ですって、貴方ごときが私の何を理解しておいでで?
……私はこの国を、守り、正しく歴史をいずれは変えなきゃならない者よ。
いまはお父様……いえ、この国のイタリアの王の命令にしか従うことのできないの。
わたくし、“皇女フィラン”は名ばかりで、王に糸でただ操られた魂のない人形よ。
民衆は、私をどうやら“投獄の姫”とも呼ぶわ」
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