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そこには、二人の男女の名前が刻まれていた。
女性の名は、
“カテリーナ・ルシス”
男性の名は、
“リーノ・ルシス”
墓に刻まれた亡くなった日付は、今から3年前になる。
これは、紛れもなくオルガの両親の墓だ。
普段は、厳つい顔色だがここでは幼い少年のような眼に戻る。
「父さん、父さんが王の騎士として使えていた頃とは、もう全てが新しい時代へと塗り替えられてくもんだな……
あの頃は、父さんが騎士として俺を一流の剣士に育てあげようとしてたのを、今でも思い出すよ。
あの頃は、父さんが王宮にいくたびに俺がアヒルのように付いてっては、フィラン皇女ともよく庭を走り回ったけな……
父さん、母さんが亡くなってから俺は王宮の騎士を止め、いまは警察になった。
剣を抜くことに変わりはないが、あの宮殿にずっといるよりマシだぜ?
だから、安心して見届けてくれないか?
……仇は必ず俺がとってやるから」
先程買ってきてた百合の花束を、オルガはそっと墓の手前に置くとニッと歯を剥き出しに笑む。
刹那、慈しむかのように一筋の太陽の光が墓を照らす。
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