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兎に角、様々な要因から彼は徒歩で、1人だ。そして通りなのに他に人気は無く、独りだった。
「こんにちは。」
__後ろ?突如として誰もいる筈の無い背後から聞こえた声に血の気が引く。だがここで同時に脳をフル回転させようとまた一気に血が巡り出したのはこれまでの経験が活きてきているからなのだろう。振り向きながら距離を取り、その声の主の正体を___
「あら、いい反応するのね。楽しくなってしまうわ。」
掴むことは出来なかった。振り向く事も、距離を取る事も出来ず、その声は相変わらず後ろから聞こえてくるのであった。
「ぐっ、身体が……!?」
まるで自分の身体ではなくなってしまったかのように優闇の身体は指一本動かせない状態となっていた。抵抗が無い様子から動けない事を確信したのか声の主は後ろから艶かしくも彼の身体を触り始める。声を聞いた時点で察しはついていたものの、時節背中に伝わる柔らかな感触から声の主は女性であると意識してしまい、尚更この状況は何なのだと困惑する。至る所に触れ、それなりに堪能したのか「ふぅ。」と一息ついた所で、今度は耳元で囁くように喋り始めた。
「貴方には分からない事はある?」
強いて言うならば今のこの状況最も分からない事だと言いたい所ではあったが、優闇はその言葉を飲み込んだ。
「今はまだ分からない事すら分からない。僕は色々と知らな過ぎる。」
女性はクスリと笑い、「確かにその通りね。」と言った。
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