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「貴方は分からない事が何か知りたい?それとも、分からない事を知るための術が知りたい?」
実際の所、僕は何も知らない。この前の事件だってそう、能力者だって、僕自身の事だって……確かにその通りだと言った彼女は何を知っているのか。そして微妙なニュアンスの違いだが彼女はその答え、もしくはヒントを持っているという事なのだろうか。そうでなければこんな事をする理由が分からない。もし敵であるならば、自分を拘束した時点で殺している筈だ。
「出来ることなら……僕はなるべく自分で知りたい。誰かに聞いた答えと、自分で見つけた答えじゃ違うかもしれないから。」
優闇は背中の彼女は敵ではないと信じる事にした。手段こそ理解しかねるが自分に何かを伝えようとしているんだと。
「だから、教えてほしい。分からない事を知るための術を。僕が僕だけの答えを見つけられる為に。」
「えぇ、なら誘いましょう、幻想へ……貴方だけの答えを導き出せるように__。」
ふと優闇の身体が軽くなったかのように感じた。拘束が解けたのだと察し、振り向いた。そこには金髪の、紫のドレスを着た女性が、徐々に上へと浮かんで行った。
「……あれ?」
否。彼女はそこから動いてはいない。動いているのは優闇の方で、彼自身が先程まではなかった穴に飲み込まれる形となって落ちているのだ。優闇は抵抗しようと試みるが背中から翼は生えて来ない。そして不思議な事に落ちている筈なのに落ちている感覚がまるでないのだ。ただ距離が離れていく。現実が現実から離れていく。前とは違う日常の崩壊に、彼はただ気を失う事しか出来なかった。
自分が今どういう状況なのか、そしてこれから何が起こるのか、何一つわからないままに__。
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