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「今のは……。」
あの目……アレはいったい何なんだろうか。不気味ではあったけど何故か知っているような気が__
「こんな所で何をしているのかね?」
不意に声を掛けられ、思考が現実にシフトする。我に返った優闇は立ち上がり声のする方へと顔を向けた。
「えっと、此処は……?」
足元には小石が転がり、近くには水がある。それ以上は霧が濃くてとてもじゃないが見えなかった。得られた情報はそれだけだったが、優闇はとりあえずそれらを統合する事で、此処は河原なんだと判断した。
だが、此処が何処かを知る彼女の口から出た答えは彼の判断を少しばかり上回っていた。
「ここは三途の川。普通の人が来る場所じゃあないのさ。」
「……えっ?」
思考が止まること数秒。三途の川。死者となった者が此処に辿り着き、死神の漕ぐ船に乗り彼岸へと渡るとされている。死後の世界であり、生きている者が来ることは無い。つまり__
「三途の……?え、僕は死んだの?」
自分は死んだ。優闇が辿り着いた結論はこうであった。だが目の前の彼女は、見るからに死神の物と言える鎌を持った彼女は肯定も否定もしなかった。
「確かめてみるかい?この鎌でお前さんを斬ってみて何ともなかったら死んでる。死んだら生きてた事になる。」
「やめよ?」
そんな悪魔の証明みたいな確かめ方はゴメンだ。そう優闇は生きている事も死んでいる事も確かめたくないので全力でお断りした。
「ははは、そうかい。まぁ見る限りお前さんは外の世界から来た人みたいだし、何で此処なのかは分からないけど生きてるんだろう。きっとそうだ。」
「そう願うよ……ところで、君の名前は?」
「アタイは小野塚 小町。好きに呼ぶといいよ。」
「僕は暁 優闇。よろしく小町。」
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