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「先生ー」
そばかすの男子生徒が手を上げる。
「篠瀬ならあそこにいまーす」
そばかすは窓に指を差した。
クラスの生徒たちが、何事かと窓際に向かう。
私も窓の外を見た。
……篠瀬だ。
篠瀬が中庭の大きな木の下で、寝転んでいる。
「こら、皆席に着け!」
教師が怒ると、クラスメイトたちはそれぞれ席に戻った。
私も窓から黒板に視線を戻す。
数学の教師は頭を掻いていた。
「篠瀬はしょうがないやつだな……。誰か、篠瀬を呼びに行ってくれないか?」
ほとんどの人間が目を逸らした。
異質な人間には関わりたくないのだろう。
「あー……、じゃあ、永島。行ってきてくれ」
姓名を呼ばれて、はっとする。
……私が?
なんでだ?
大人しくしているから、教師は私が真面目な人間だとでも思っているのか?
私は不安定だぞ?
そんなやつに篠瀬を呼ばせるなんて……。
「永島、行ってこい」
教室の視線が集まる。
逃げ出したいこの状況に、私は「はい……」と言うしかなかった。
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