第1章

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「先生ー」 そばかすの男子生徒が手を上げる。 「篠瀬ならあそこにいまーす」 そばかすは窓に指を差した。 クラスの生徒たちが、何事かと窓際に向かう。 私も窓の外を見た。 ……篠瀬だ。 篠瀬が中庭の大きな木の下で、寝転んでいる。 「こら、皆席に着け!」 教師が怒ると、クラスメイトたちはそれぞれ席に戻った。 私も窓から黒板に視線を戻す。 数学の教師は頭を掻いていた。 「篠瀬はしょうがないやつだな……。誰か、篠瀬を呼びに行ってくれないか?」 ほとんどの人間が目を逸らした。 異質な人間には関わりたくないのだろう。 「あー……、じゃあ、永島。行ってきてくれ」 姓名を呼ばれて、はっとする。 ……私が? なんでだ? 大人しくしているから、教師は私が真面目な人間だとでも思っているのか? 私は不安定だぞ? そんなやつに篠瀬を呼ばせるなんて……。 「永島、行ってこい」 教室の視線が集まる。 逃げ出したいこの状況に、私は「はい……」と言うしかなかった。
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