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小泉を追って体育倉庫に行くと、小泉がしゃがみ込んで、さっきぶつけたであろう背中を擦っていた。
泣いてはいない様だ。
俺の存在に気付いていない様子の小泉は『んー。届かない』と呟いて、背中の真ん中らへんを擦ろうと一所懸命手を伸ばしていた。
…小泉、身体固すぎ。
見兼ねて小泉の背中を擦ってやると、小泉がビックリした顔で振り向いた。
「あ、香川くん。…ありがとう。でも、大丈夫だから」
小泉が俺に笑顔を向けた。
明らかに作り笑い。
だって、大丈夫なわけがない。
元気有り余る18歳の男に、普通に体当たりされたら、俺だって痛い。
小泉なら、尚更痛いはず。
小泉の『大丈夫』を無視して擦り続けていると、小泉のTシャツがずれて、背中が少し見えてしまった。
真っ赤に腫れていた。
「小泉、保健室に行こう。背中、真っ赤だぞ」
「えッ!?」
小泉が急に身体の向きを変えて、背中をピタっと壁にくっつけた。
「…あ。巨人のくせに何恥ずかしがってんだよって感じだよね。あ…あはは」
小泉は、俺に背中を見られた事が恥ずかしかったらしい。
顔を赤くした小泉を、可愛いなと思った。
『巨人のくせに』と自虐して笑う小泉を、悲しいなと思った。
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