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「え…?」
繭がその大きな瞳を見開いた。
「…ゴメン」
「なんで?」
繭の瞳が光り、目に涙が溜まっているのが分かった。
「俺が自分勝手なだけ。俺、可愛い繭が好きだった。繭にはいつでも可愛くいて欲しかった。
繭、なんで俺が小春と2人だけで遊んでも怒んないの?」
「だって、小春は友達だから」
「俺が小春に手出すとは思わなかった?」
「私、比呂の事信じてるもん!!」
繭の目から涙が零れた。
ズルイよ、繭。泣きながら『信じてる』なんて言われて、嬉しくない人間なんかいない。
そんな可愛い顔で嘘なんか吐かないでよ。
やっぱり俺は、ちゃんと繭が好きだったんだ。
だから、繭の嘘が分かるのが切ない。
「『小春なら問題ない』って思わなかった?」
「そんな事ない!!」
ムキになる繭も可愛い。可愛いのに、可愛くない。
「背が小さくて、繭くらい可愛いコと俺が2人で遊んだとしても、それでも繭は俺を信じる?」
「…信じる!!」
即答じゃなかった。
繭は、答える前に一瞬考えた。
良かった。繭が正直者の嘘つきで。
可愛くないけど、やっぱり繭は可愛い。
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