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「なればいいじゃん、保育士。何を悩んでいるんだろう」
小春なら、四大だって短大だって無理なく入れる。
なのに、何で保育士を目指さないのだろう。
「小春ちゃんね、昔、友達に『保育士さんになりたいんだ』って言ったらね『小春に〔高い高い〕とかされちゃったら、その子ども、トラウマになって高所恐怖症になっちゃうかもね。小春の〔高い高い〕はまじで高いから』って笑われたんだって」
大志が床に視線を落とした。
「そんな事くらいで諦めるのかよ」
馬鹿げてる。そんなの子どもの冗談だろ。笑い流しとけばいいのに。
「言うと思った。うん、香川さんには分からないだろうね。そんな風にイジられた事ないだろうから。小春ちゃんだってウケ狙いの冗談だって分かってるんだよ。
香川さんはさ、冗談は他人を傷付けないと思ってるでしょ。傷つく方が馬鹿だと思ってるでしょ」
俺を見透かすような目で見る大志。
『香川さんには分からないだろうね』
俺に、小春の心を開かせるのは無理なのかもしれない。
だって、やっぱり俺には分からない。
でも、分かりたいと思った。
小春と、大志と、分かり合えない事が、悔しかったから。
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