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「言えるよ。俺は小春に保育士になって欲しいと思うから。小春なら、絶対素敵な保育士になるから。俺、将来子どもが出来たら、小春に預けたいと思うから。いっぱい〔高い高い〕して欲しいと思うから。小春は、嫌がる誰かの気持ちは汲んで、俺の思いは無視すんの?」
大志に言われた通り、ズカズカ小春の心に踏み入る。
でも、俺の言葉に説得力などあるのだろうか。
…ないなら、ねじ伏せるしかないな。
だって小春の判断は、正しくないから。
「香川くんは子どもじゃないじゃん。大切なのは香川くんの気持ちじゃなくて、子どもの気持ちでしょ?」
小春にあっさり俺の思いを無碍にされた。
何気にショックデカイんですけど。…つーか。
「『子どもがトラウマになる』ってふざけたヤツらだって、子どもじゃないだろうが」
なんで俺の気持ちは却下されて、悪口言う奴らの主張が尊重されるんだよ。
「元・子ども。だから、子どもの気持ちは分かるでしょ」
小春は顔を歪めながら、俺が奪い取った福祉大学の資料を取り返すのを諦めたのか、別の福祉系の学校の資料を手に取った。
小春 の心の傷は根深い。
それこそ、トラウマ。
俺の声は小春に届かないのだろうか。…それでも。
だって、こんな理由で夢を諦めたら、絶対に後悔する。
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