進む私と、戻れない君

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「4」 いつだったか、「君」は沢山のものを置いていった 私はそれらに意味を添えるのが好きだった 「君」も面白がって、私と一緒に添えて遊んでいたね 暗号みたいだと「君」は笑っていたっけ 「小豆の色はね、優しい色なんだよ? それは黒じゃなくて、手をかけられた証で、優しさの色なんだよ?」 小豆色の目が私を見つめる 私もその目を見つめ返す やけに白い肌をした君は、それこそ大福そのものだと思った ………… そう、私たちの間で決めた言葉の意味 「大福」を、私たちは「優しさ」と決めた 柔らかさに包まれた小豆を、「君」は優しいお菓子だと言ったから だから、そう決めた 君は、「君」は、それを覚えているだろうか 私は、それを上塗りしてしまったことに、「君」は気づくだろうか ………… 君が差し出すお茶を私は飲めない それは、私たちがお茶に添えた意味のせい それは、白い太陽が隠れて見えない頃のこと その大福に必要なお茶は、あなたはいつ飲むのだろう
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