欠ける僕と、満ちない君

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「3」 穏やかな陽射しが降り注ぐ 柔らかい温もりに包まれ、僕は縁側でうたた寝をしている そこに、大きなツバの帽子を被った女の子が訪れた ツバが陽射しを遮り、影ができて涼し気だ 「ねえ、赤ずきんちゃんの話を覚えてる?」 女の子が僕にそう尋ねた 僕は「うん」と答える 「赤ずきんの話が、どうかしたの?」 「ううん、大したことじゃないの。でも、悲しい話だなと思って」 「悲しいの? 赤いのに?」 「赤いからだよ。赤いのに、どうしてあんなに強かなんだろうって」 ………… この日は、女の子が何を伝えたいのかわからなかった でも、陽射しを遮ってしまうほどのことがあったのは、すぐにわかった 涼しいのではなくて、寒いのだ 「赤ずきんちゃんはね、被っても生きていけるの。でも、」 今日も陽射しは変わらない でも、人によって温もりが変わるのは何故だろう? ………… 意味は多様で、言葉はひとつ あなたは今日も、暖かく過ごせましたか?
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