欠ける僕と、満ちない君

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「4」 白い太陽が雲に隠れた昼のこと 風も吹かなくて暑さが肌にまとわりつき、まるで空気が固定されてしまったみたいだと思った 僕の目の前には、大きなツバの帽子を被ったままの女の子がいる 女の子はずっと、何も言わず、でも凍えていた 言葉をかけられたらと思うけど、気のきいた言い回しも何も浮かばない できることは、とても少ない 「その帽子、なんだか大福みたいだね」 そう言って僕は、女の子に笑いかけた 「大福はね、お茶を一度にたくさん飲むって意味もあるんだよ。面白いよね」 「……おかしくなりそうな話しだね。でも、面白くはないよ」 「えー、いいじゃんお茶。大福にお茶だよ?」 「……ダメだよ。大福の中は黒いもん。白く誤摩化してるだけだよ」 そう言って女の子は、大きなツバのついた白色の帽子を深く被りなおした ああ、違うよ……僕が言いたかったのはね そうじゃないんだ 女の子の帽子をそっと持ち上げる 「小豆の色はね、優しい色なんだよ? それは黒じゃなくて、手をかけられた証で、優しさの色なんだよ?」 ………… 「×××(僕の名前)の目は小豆色だね。だから、私に手をかけてくれるのかな?」 「……僕はね、その小豆色の髪の毛好きだよ。だから、ムリに白を被らないで」 クスッと、ここではじめて女の子は笑顔をみせた 「その真っすぐさが温かいよ。でも、お茶は飲んでいかないからね」 「うーん、そこは飲んでいこうよ」 ………… 男の子と女の子だけがわかる言葉遊び その大福に必要なお茶は、あなたはいつ飲むのだろう
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