欠ける僕と、満ちない君

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「6」 暮れなずむ頃に雨はあがろうとしていた そしてそれは、唐突だった 女の子の言っていたヒキガエル達は、数で僕達を囲っていた 「ーーーーーーーーーー」 ヒキガエル達が何を言っているのか、僕にはわからない たくさん聞こえるその声は、今を夏だと錯覚させてしまいそうだ でも、その言葉は間違いなく耳に届き その意味もまた、僕の奥底に届いていた ああ、そうか 女の子が言っていた意味がやっとわかった 確かに、赤を被って強かに生きられる赤ずきんを不思議に思うよね でも……それは…… ………… それでも僕は、聞き続けることしかできなかった 赤を被る必要が僕にはあったから ………… 気がつけば、雨蛙はどこかへ消えていた 欠ける月で、今日も赤く染めた
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