48.再会の日 

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ハズれて欲しい。 だけど義兄の運命も変わることがなかったから、 多分……晋兄の運命も変えることは出来ない。 だからこそ、変えられない未来なら、 せめて晋兄の一番近くで晋兄を見ていたいから。 「雅姉さま……。  私、やっぱり晋兄に会いたいです。  晋兄を探します」 そんな私に雅姉さまは小さく溜息をつく。 「困った妹ね。    こんなところまで、  あの人の生き方を真似なくてもいいのよ。  芯があって、頑固なんだから。  いいわ、だけど……それが舞ちゃんだもの。  明日、下関に行きなさい。  下関に[おうの]と言う人がいるわ。  その人を訪ねて見なさい。  おうのさんなら、私が知らないことを  知ってるかも知れないわね」 そうやって紡いだその名前。 「おうのさん」の名前を紡いだ雅姉さま。 雅姉さま…… その人は晋兄の何ですか? 雅姉さまをそんな風に 悲しそうな表情に追い詰めるその人は……。  「さぁ、明日出発するのよね。    舞ちゃんは、早く休みなさい。  明日からまた旅を頑張れるように」 その日、懐かしい部屋で ゆっくりと熟睡することが出来た。 明くる日、私の頭元には新しい着物。 着物の上には、 雅姉さまからの手紙。 * 舞ちゃん 私のお古で悪いけど、 舞ちゃんが着れるように縫い変えました。 こっちはあの人の着物です。 舞ちゃんから渡してあげてください。 雅 * 私の着物の下には、綺麗に包まれた 晋兄の着物らしき包み。 雅姉さまの着物に身を通して、 早々に着付けを終えると、 自分が着ていた着物と、ずっと大切な制服を 風呂敷へと丁寧に包む込み。 そのまま着物の入った風呂敷を抱えて、 客室を後にする。 最後にあの柱にもう一度触れながら。 「行ってきます」っと 小さく柱に向かって声をかけた。 すでに朝餉の支度を終わった広間。
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