49.山南さんと過ごす時間 

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「おいっ。  おい、山波」 山南さんのことを考えながら、 掃除をしている私に降り注ぐ声。 「あっ、すっすいません」 慌てて反射的に立ちあがった私の頭は、 畏れ多くも、土方さんに頭突きをする形となり そのまま体制を崩した私は頭突きしたその人に、 支えられる形で事なきをえる。 「てめぇ」 「あっ、すいません。  本当にごめんなさい。  ちょっと考えごとしてて、ボーっとしてて。  でもでも、仕事はちゃんとサボらずにするので」 一気にまくしたてるように弁明していく私に、 土方さんは、溜息を一つ零して自分の部屋へと招き入れた。 促されるままに、土方さんの向かい側の席へと座る。 「山波、お前……最近、山南さんと一緒に良くいるな」 えっ? 山南さんの事? 「居るよな。  山崎から情報は上がってきてるんだ」 丞の名前を出されて逃げることは出来ない。 それに山南さんと一緒に居ることに悪いことなんてないはず。 私は覚悟を決めて、ゆっくりと頷いた。 「そうか……認めるんだな」 そう言うと、土方さんは目を閉じてゆっくりと立ち上がると、 おもむろに自分の刀を鞘から抜き放って煌めく刀を見つめた。 ただ睨みつけるように、 刀を触る土方さんを見つめながら委縮する体。 この人だけは何を考えてるかわからない。 鬼の副長なんて呼ばれてるのも 瑠花情報で知ってる。 新選組の為なら、何処までも心を殺して 非情に慣れる存在(おとこ)。 「土方さん、その刀で山南さんを切るんですか?」 自分でも信じられないくらいに低い声で、 問い詰めるように放たれた自分の言葉。 その言葉に、土方さんの口元はピクっと一瞬動くが その後、刀を鞘へと戻して座ると私の方に向き直った。 「おい、山波。  どこをどうしたら、俺が山南さんを殺すんだよ。  てめぇらの妄想もたいがいにしろよ」 そう言って吐き捨てるように言うと、 頭をかいて、ゆっくりと用件を伝えてきた。 「山崎に聞いた。  お前は山南さんの子孫になるんだってな」 突然告げられた言葉に言葉を失う。 面と向かって言われたのも初めてだし、 土方さんが知りながら、心に留め置いてくれたことにも。
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