49.山南さんと過ごす時間 

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「用件は終わりだ。  任務に戻れ。  その間、屯所内の仕事は他の隊士にも手伝わせる。  山波は山南さんの傍にはりつけ」 厳しい物言いだけど土方さん公認の元、 山南さんと堂々と一緒の時間を過ごせる。 それは私にとっては、やっぱり嬉しくて。 慌てて土方さんの部屋を一礼して飛び出すと、 続きの掃除を終えて、瑠花に「山南さんの傍で、お世話することになった」っと 実際とは少し言葉が違うけど報告して私はその部屋へと訪ねた。 「山南さん、山波です」 朝から姿を見せた私に山南さんは机から視線をあげた。 「本を読んでいたんですか?」 「えぇ」 そう告げた山南さんの顔色は 少し疲れているように青白くて。 「山南さん、眠れないんですか?」 恐る恐る問いかける。 「そうですね。  薬師から薬は頂いていますが、  眠れない日々が続いていますね。  昔の出来事を何度も夢にみます」 昔の出来事を夢に見る? 深く入り込みたいけど、入り込むにも勇気が必要で。 「山南さん、すいません。  ずっと引っかかってたことがあって。  この間、永倉さんが山南さんの部屋に来ていた時  何を話されてたんですか?  先日、近藤さんが会津公から呼び出されて  建白書のことが明らかになりましたよね」 「あぁ、山波君は確か、  部屋を出て行く永倉君とすれ違ったのでしたね」 「擦れ違いました」 「組を思う気持ちは大切です。  それ故に、周りが見えなくなることもある。  人というのは難しい生き物ですね。  交錯し闇に飲まれゆく力には、浄化も必要となるのでしょう。  少々、やり方には問題があるようですが……」 そう告げると、山南さんは少し考え込むように目を閉じた。
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