50.東からの新隊士 

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「失礼します」 私たち二人がいる部屋に、 隊士の一人が声をかける。 「先ほど、近藤さんが京に入られたとのことです。  今日にも、こちらへお戻りになられる予定です」 静かに隊士は告げて、 私たちの前から姿を消した。 近藤さんが帰ってくる。 思ってた以上に、 物事が早く動いてる気がする。 まだ先だって思ってた出来事が少しずつ目前に迫ってくる。 そして……花桜が悲しむ。 そんな花桜の悲しむ姿を想像するだけで、 そんな日が来なければいいのにって 思ってしまう。 大切な支えがいなくなってしまう悲しさ。 それは私が一番良く知ってる。 ただでさえ、花桜のことは私が沢山苦しめた。 だからこそ……幸せそうに過ごすこの時間を、 叶うならずっと続いてほしい……ずっとが無理なら、 せめて少しでも長く……。 「近藤さんが帰ってくるなら僕も準備しなきゃ。  じゃ、瑠花。  瑠花はこのことを、山南さんに連絡してくださいね。  土方さんのところに行ってきます」 総司は手入れを終えた刀を手にゆっくりと部屋を出て行った。 私も総司とすごしていた部屋を後にして、 花桜が行き来している部屋へと向かう。 近藤さんが帰ってくることに総司は喜んでる。 だけどそれは……アイツが来ることになる。 もう時間がない。 動くなら、早く動かなきゃ。 このことを花桜に早く伝えるべき? 山南さんが切腹するあの日が近づいていると。
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