50.東からの新隊士 

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史実では、切腹とも自殺とも言われているけど そのどちらもが、山南さんの命が途切れることを示している。 そんなことを考えながら、 私は山南さんの部屋らしき場所へと辿りついていた。 「山南さん、岩倉です」 障子の前に正座して奥の部屋へと声をかける。 中からごそごそと音がして、 スーっと障子が開かれた。 「おやっ、珍しいお客様ですね。  花桜くんは、今は道場ですよ」 立って出迎えてくれる山南さんの声に誘われるように 室内へと足を踏み入れる。 初めてお邪魔した彼の部屋は書物に囲まれた空間。 「凄い本ですね」 思わず零した声に、彼はゆっくりと笑って 私が座りやすいように場所を指示(さししめ)した。 「山南さん。  花桜の事はどう想いますか?」 花桜の事はどうおもいますか?って 私、何突然切り出してるんだろう。 自分でも慌てるような質問を切り出してしまった自分自身に びっくりする。 「唐突な質問ですね。  ですが……その真っ直ぐな眼差しを見るに  大切な答えのようですね。  花桜君の存在は、  日々、私の中で大きくなっていますよ。  彼女に支えられる時もある。  彼女は強くなりましたね」 山南さんはそう言いながら、視線を道場の方へと向けて、 負傷したらしい腕をもう片方の手で押さえた。 もしかして……思い通りに動かない腕に 苛立ちや疼きを感じてるのかな? そんな風に感じた。
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