50.東からの新隊士 

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「良かった。  花桜にとって、山南さんはとっても大切な存在だから。  だから山南さんにとっても、花桜の存在が  そんな存在だったらいいなーって思ったんです。  今度はもう少し突拍子もないこと言います。  山南さん、花桜の為に今すぐ明里さんと出掛けてください。  今日の夜にも近藤さんが帰ってくる。  彼が帰ってきたら、山南さんの居場所がなくなる。  未来の歴史はそうなってるんです」 一気に言い切った私はチクリと痛む胸に静かに手を当てる。 未来を知ってるからって、 次から次へと、その出来事を宣告していく私。 残酷なことしてる。 知らずに過ごせれば、  もっと穏やかに過ごせたかもしれない。 その未来を知って、 喜ぶ人も居るかもしれない。 だけど大抵はそうはならない。 何とかしたい一身で、知りたくもない未来の出来事を告げる私は ある意味、言葉で人を刺殺してるのと同じ。 生身の血が出ることのない刃。 言刃(ことば)。 言刃を私は突き立てる。 「岩倉君が未来から来たこと。  そして今までにも何度かこういう出来事がありましたね。  次は私がその出来事の中心人物となりうるのですね」 山南さんは、責めるでもなく私を労るようにすら感じられるほど 優しくゆっくりと告げた。 「近藤さんが京に戻ってる今、彼の傍には藤堂平助さんと  同門の伊東甲子太郎って人が来るんです。  この人が来て、近藤さんはだんだん変わってしまう。  それに新選組の編成が変わって山南さんの居場所がなくなってしまう」 そう、山南さんの居場所がなくなってしまう。 この屯所で生活するための僅かな光すら見失ってしまう。 そう言われているから。
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