47.隠れ聞いた秘め事 

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なんだろう。 やましいことをしてるわけじゃないのに、 罪悪感にも似た感情を感じてしまうなんて。 歴史を知っているから? 歴史を知っても、どうにも出来ないと諦めてしまっている その心を見透かされるから? 一度そう思ってしまったら、道場で一生懸命に練習する隊士たちを まともに見つめることなんて出来なくて逃げるように道場を後にした。 どれだけこの世界で生きる覚悟をしたって言っても 所詮、やっぱり別世界の人間。 だから……一番自分が疎外感を強く感じてしまうんだろうな。 ちゃんとこの世界で生きるって決めたし、 精一杯頑張るって決めたのに、それでも……完全のこの世界の住人にはなりきれない。 「お待たせ。  瑠花、先に道場出てどうしたの?」 道場の前で丁寧にお辞儀をした後、 私の方に駆け寄ってくる花桜。 「ううん。  思い出したら、疎外感が強くなっちゃった。  どれだけこの世界に生きようと思っても、  私の記憶の中の史実が私をよそ者にしていくんだなって」 「ごめん……瑠花。  私が聞いたから」 花桜の言葉に、ゆっくりと首を振る。 「さっ、部屋に行く前にお茶出しだけ終わらせちゃおう。  そしたら二人の内緒話邪魔されることもないよね」 花桜はそう言うと炊事場の方へと向かった。 そんな花桜を追いかけるように私も向かう足取りは重い。 どうなっちゃうんだろう。 考えても仕方ないけど考えずにはいられない。 避けられない運命もあれば、避けれる運命もあるかも知れない。 鴨ちゃんの出来事は避けられなかった。 久坂玄瑞の運命も変えられなかった。 そしたら今回は……? 私が頭を悩ませて動かない間に、 花桜が二人分の仕事をテキパキとこなしていく。 干した洗濯物を取り込んで、 庭や道場で練習する隊士・部屋で仕事をしている人たちに お茶を出して畳んだ洗濯物を置いてくる。 そして私の前へと反応を確かめるように、 わざと顔の前でひらひらと手を振る。
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