47.隠れ聞いた秘め事 

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「二人とも、何をしている」 問われた言葉に私は持っていた紙を背中側へと隠す。 「山波、昼間の一件聞いていたな」 そう問われた直後、 花桜は開き直ったように斎藤さんに向き直った。 「聞きました。  ただ聞こうと思って聞いたわけじゃないですよ。  私は床を拭いてただけですから。  聞かれたくない話だと、あんなところでしないでください」 きっぱりと言い切る花桜。 だけど花桜……それはマズいよ。 どんだけ言い切っても、私たちがしたことは現代でも犯罪だから。 その自覚あるの? 「一理あるな。  その結果がこれか」 斎藤さんは、溜息と共に吐き出すように告げると 手にしていた蝋燭を私の方へと向けた。 「岩倉、隠したものを前に出せ」 気まずいながらもこれ以上、 誤魔化すことは出来ないとしぶしぶ手を前に出す。 「すいませんでした」 謝罪で許して貰えるとは思わないけど だけど……ありきたりな言葉を添えて。 「まぁいい。  中身が見たいのだろう」 そのまま、書き綴られた文章が読みやすいように 蝋燭の炎を近づけてくれた。 蝋燭の灯りが書き記された文字を浮かび上がらせる。 綺麗な文字で綴られたその中身は読める範囲で読んだ感じだけど、 史実に伝わる、非行五箇条の内容に近いものが書き続けられていた。 「やっぱり……」 脱力するように床にぺたりと座り込む。 そんな私を花桜がしゃがんでケアする。 「山波、岩倉。  それ以上は深入りするな。  もう満足だろう。  これは戻しておこう」 そう言って、私の手から斎藤さんはその紙を抜き取ると文机の上に置く。
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