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時は少し遡り、ここは魔王城の庭。
この城の主である魔王が趣味で庭を弄るため、とても綺麗な花園が一面に広がっている。
ただし何十年かに一度訪れる勇者一行になるべく荒らされないようにするため、城の真正面はそれらしい雰囲気のある茨のようなものを育て、本命である色鮮やかな花々は城の裏で丹精に育てている。
そして今、地道に如雨露で花々に水をやる1人の人物ーーそれは言わずもがな魔王である。
黒に少し藍が混ざっているような深い色の髪、その髪色は黒という色に少しの落ち着きや奥深さを感じる藍が混ざり、柔らかい雰囲気を纏う黒髪となっているように見える。
甘いマスクに柔らかい微笑みを形作る彼は、充分に膨らむ花の蕾を慈しむかのように指先でそっと触る。
如雨露を空間に仕舞い込み、次に両手で花々の葉や茎などにもスルリと指を滑らしていく。
そんな彼の背後に、白い何かが舞い降りた。
?「久し振りだな、ギルア」
その白はまるで聖なる光を形にしたような、純白の白。
その白は魔王ギルディアーノへと声をかけ、それに応えるかのように魔王は彼へと振り向く。
ギルア「やあ、なんだかいつも身構えてしまうよ、君に騙されている気分だ」
白は正に、その男自身を言い表したような言葉であった。
ギルア「それにしても…いつ見ても綺麗な翼だね」
白の男はその背に6対もの純白の翼と、同じく純白の髪を持っていた。
?「空の上じゃあ、俺様の翼に勝るほど麗しいものは他にはないぜ?
何せ神の翼だ、と神からもお墨付き貰うくらいだからな!」
白い男は悪戯っ子のような無邪気な笑顔で笑う。
ギルア「…羨ましいねえ、僕もほしいよ」
?「はは!魔王がなに言ってやがる!」
ギルア「ああ…そうだった、僕は魔王だったね……けれど僕がその翼に憧れるのも不思議ではないと思うけどねえ…
だって僕、元は人間だったもの…300年も前の話だけど」
魔王ギルディアーノはとある理の上でその生を300年もの間維持し続けていた。
後に詳しく説明する場が設けられるであろうと判断をし、要約しておこう。
魔王ギルディアーノは魔王であるが故に、不老不死なのである。
?「元は…ねえ?笑えるぜ本当に!
人間ってのはおもしろいなぁ…特にギルア」
白が笑う。
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