第1章

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「この世の中には二種類の人種がいる。ユーモアのセンスがある人とそうでない人さ。そうして、ユーモアのセンスのある人は日々を楽しく過ごすことができる。賢い人とはちょっと話しただけでも楽しい。友達も増える。君は人生の成功者になりたくないのか?」 「成功者はわずかだけでしょ? サッカーだって日本代表に選ばれるのは極一部でしょ? 成功することが幸福ならば、大部分は不幸になるんじゃないですか?」 「そんなに目標が高いのか君は? それだけ目標が高ければできないときの悲しみもそれだけ増すではないか。自分のささやかな目標をかなえようとしてみてはどうかね ? 身近なことを面白くできればいいではないか」 「そうですね。私は目標が低いのでうけなくて結構です」 「君は自分の目標を達成することにベストを尽くせ」 「それでは、悲しみが増すだけでしょ?」 「そうだ。悲しめばいいんだ。成功のための悲しみならば、ワニに食べられても喜びとなるではないか。どんどん悲しめばいいのだ」 「成功のためには、つらいことを受け入れろと言いたいんですか?」 「そうだ、できれば世界一を目指すんだ。登るのはエベレスト以上に高い山だ」 「さっきと違うことを言っているような気がするのですが」 「矛盾を受け入れられないようじゃ、ユーモアの達人にはなれぬ。変なこと、意外なこと、うそをつくことが、ユーモアにとって不可欠なことだ。うそとユーモアとは大の仲良しで互いに助け合うんだ」  私は、何回か講義を受けた。そしてある日先生に質問した。 「この構文集は名文句が並んでいますが、もっとギャグを並べたほうが理解しやすいと思います」 「レトリックを駆使すれば、くだらない内容も面白いと錯覚させてしまうんだ。真に重要なことは、面白いことではなく、中身なんだ。大切なことを面白く言う習慣を作ってほしい」  私は、構文集を読み続けた。そして、飽きてくるとこうぼやいた。 「ユーモアで何が出来るのですか? ユーモアで世界平和が達成されますか? 戦争を終わらせることができますか?」 「それは、できるとも言えるし、できないとも言える。だが、そこで『出来ます』と言い切るのがユーモアさ。そして君はできることなら、がんばってがんばって立派な猫になるんだ」  私は、構文を読み続けたが、明らかに嫌々な態度だった。
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