第1章

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「人を笑わせるためには、一度死にたいと思ったことがあるような経験が必要なんだ。生きることの意義を切実に思えるからこそ、人を笑わせることを考えるようになるのさ」 「死にたいですか?」 「私は病気になった。病気になると、今から起きるべきか考える。だが、結局寝ることを選んでしまう。健康なときは、起きられることに感謝の気持ちが生まれるのさ。そして、起きている時間を無駄にしないことを考えるようになるものさ。そんなとき、ユーモアに救いを求めたんだ。人生からユーモアを取り去るのは、この世界から地球を取り去るようなもの。私はユーモアのよさを他人にも知ってもらいたいと考えた。ユーモアに翼をつけて、世界中に届けたい。だが、この地上はユーモアにとってあまりにも狭い。」 「私のギャグはうけません」 「では、君の左手のネタはうけるのかな?」 「右手にはかないません」 微妙なギャグに私は自信を失った。 「ユーモアのセンスというのは才能の違いが表れるものでしょ?」 「ユーモアのある人はただ情報を処理しているにすぎないんだ。どんに速く頭が回転していても、情報を入力して、それを加工、処理しているにすぎない。そのスピードが他の人より桁違いに速く、意外なために周りの人を『スゴイ』と感心させるのだ」 「私にも身につくものでしょうか?」 「思考プロセスが分かれば、訓練により身につくはずだ。法則を知れば、誰がやっても再現可能なはずだ。技術は万人が身につけられるものだ」 「誰でも、猿でも身につけられるんですね」 「そうだ、そして、技術を身につけることで、楽しい人間関係を身につけることができる。閉塞感の突破口を切り開くことができる。幸せは人によって違うが、幸せが達成できる基準が欲しい。つまり、今を面白くできることだ。今を面白くできなければ、面白い時間は永久にやって来ない。目前の時間を魅力あふれるものにするのは、君、君の人生をつくるのは君なのだ」 「具体的にはどうすればいいのでしょう?」 「日々を充実させることだ。例えば、会話は楽しくさせる。自分の話す内容は『おはよう』と言うより価値のないものであってはならない。その時その時を工夫して過ごすのだ」 「すぐにそんなバラ色になりますか?」 「長い鍛錬が必要だ。長い鍛錬がこの一瞬を呼ぶと言っていい」 「でも、いいアイデアはなかなか出てくるものじゃないでしょ?」
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