第1章

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「ひらめきと猫とは呼んでも来ないが、呼ばない時にやってくるんだ」 「アイデアは落ちているものではありませんね?」 「ユーモアのネタは地球上の魚の数よりも多いんだ。アイデアは落ちているものだが、なかなか捕まらないのだ。素手で魚を捕まえるようなものさ。魚はたくさんいるのだけれど捕まえることができない。だから、アイデアは釣り上げるにかぎる。しかも、一本の釣竿ではなく、百本の釣竿で釣り上げろ」 「私は魚をどうやって釣り上げればよろしいしんですか?」 「システマチックに対処するのだ。こういう時は、こうする、ああいう時は、ああすると対応を決めておくのさ。その数が多ければ多いほど、つまり、釣竿が多いほど、アイデアは捕まえられるのだ」 「いろいろなパターンを知っておくわけですね?」 「システマチックに対応すれば、牢屋の中でもアイデアは生まれるし、死刑囚だって笑わせることができるはずだ。人を笑わせるのは、手をたたくのと同じくらい簡単になる」 「スピードにも対応できるわけですね?」 「理論を整備してシステム化してあればね。そうすれば、知識は活用できるようになる」 「でも、何度も同じことを繰り返したらあきられるし、ネタ切れにもなるでしょ?」 「いろいろなパターンを試していれば、マンネリにはなりにくい。そして、アイデアが出尽くしてしまったときは、辞書を見ればいい。千も見出し語を眺めれば、その中から一つや二つ、引っかかる言葉が出てくるものだ。例えば、『ヘルメット』という単語に行き当たったとする。昔、『ヘルメットを脱げ』といきなり言うネタがあったが、これは情況によっては、今でも復活するネタだろう。また、猫にヘルメットをかぶせたらどうなるか? 実際に実験してみれば面白いだろう。」 「ネタが切れそうになったら、キーワードがたくさん載っているものを眺めるわけですね」 「ネタの仕入れ先は人により違いがあったほうがいいが、たくさんのキーワードを眺めることは重要なことさ。その他にも、ショッピングセンターで品物を見たり、動物園に行ったり、本を読んだり、常に新しいネタを仕入れる努力をしなければいけない。ネタは千集めて一つ出すようにすれば、飽きられない」 「千集めて一つですか?」 「魅力的な自分、面白がっている自分をアピールするのだ。一言に最善を尽くすんだ」 「たくさん、経験して、魅力的な人生を送るわけですね?」
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