第1章

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「もちろん、知識は多いだけではいけないよ。五千語単語を暗記しても、外国語が話せるようにはならない。三百語を適切に使えることが大切だ。まず、得意の型を一つ作ることだ。法則を見抜き、知識を使えるようにすることがより大切だ」 「私はどんな目標を持てばよろしいのでしょうか?」 「君は石を笑わせることができるくらいにならなければならない。石が無理だったら、猫を笑わせろ。何、猫は言葉が分からない? 猫を笑わせるにはくすぐればいい」 「猫は笑いません」 「猫は笑う。猫は哺乳類じゃないか。猫が笑うことを知らないものに、ユーモアが理解できるわけがない」 「では、石をどうやれば、笑わせられるのか教えてください」 「まず、面白さの本質について知ることだ。面白いと感じたことがあれば、なぜ面白いのか考えるのだ。そうやって、考えていくと、思い込みを突き崩したときに、ユーモアが生まれることが分かる。人間にはとらわれがある、それを揺さぶるんだ。意外だとか、新鮮だと感じることに人は面白さを感じる」 「どうすれば、思惑を裏切ったり、新しいものを提案できたりするんですか?」 「例えば、ずらしてみればよい」 「ずらす?」 「魚が泳ぎ、猫がひっかくでは当たり前だ。それらを入れ替えて『猫が泳ぎ』、『魚がひっかく』とすると、意外になる。実際に魚がつめでひっかいている場面をイメージしてみよう、意外だろう? 『ライオンが甘えて胴をすり寄せて来る』のもあまりなさそうな情景だ。新しい組み合わせを見つけることが大切だが、その時、型を見つけ、部分を組み替えていくことが大事なんだ」 「型を見つけ、組み換えていくんですか」 「例えば、目的をずらしていくというのがある」 「目的をずらす?」 「自動車の目的は移動だ。そしてイスの目的は座ることだ。そこで、『イスで移動し、自動車に座る』とずらすことができる。『競馬場でお祈りすると願い事がかない』『神社で馬券を買う』とずらしてしまうんだ」 「なるほど」 「ちょっと道を空けてくれないか? タイガーウッズに会いたいんだ」 「道を空けてもタイガーウッズには会えないわけですね? ずらすと新しいものが生まれていくわけですね」 「全ての新しい組み合わせが意外なわけではないが、新しいものを生み出す発想法を知っていれば困りにくくなる。型は多く知っているほうが、より柔軟性が出てくる」 「型はどこで見つけるんですか?」
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