23...惚れた弱み【Side:山端逸樹】

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 いつも入り慣れている我が家なのに、やけに緊張してしまったのは居ると思っている直人が、もしかしたら待ちくたびれて帰ってしまったのではないかという不安を覚えたからだ。  見るとはなしに腕時計に視線を落とすと、十時半を過ぎたところだった。 (結構微妙な時間だよな)  朝、と呼ぶにはいささか遅い、中途半端な時間帯。  直人が待ちきれず帰宅してしまっていたとしても、無理はないように思われた。  そんな不安にかられながら窺い見るように自室の窓を見上げると、ベランダにスパロウの鳥かごが吊るされているのが目に付いた。  彼の鳥かごには、防寒のために俺お手製のビニールカバーが被せてある。それを見た直人が、俺が昼間は鳥かごを外に吊るしていることを察してくれたんだろう。  何も言わなくてもそこまで分かってもらえたことが、やけに嬉しかった。  中で元気に動いている愛鳥の影を確認したと同時に、外へ彼を出してくれたのは間違いなく直人だと確信する。  直人が、まさか夜通しスパロウを外へ出しておくような真似をするはずがない。  少なくともかごを吊るしたのはベランダに陽が当たり始めてからだろう。  ならば、直人は今も尚、あの部屋で待ってくれているはずだ。  そう思い至った途端、俺はホッとして身体から力が抜けていくのを感じた。  そんな気配りの出来る直人が、成り行きとはいえ他者と交わした約束を違えるはずがない。  そう、自分に言い聞かせると、俺は階段へ足をむけた。
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