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残っていたのは、例の小箱。
彼が今夜購入したもののなかで、恐らく唯一代替品が存在しないもの。
それに、何より釣りも返しきれていない!
「…くっそ、追いかけるしか――」
俺は慌てて床やカウンターに残っていた小銭を拾い集めると、まだ紙袋に入れていない箱を片手に店を飛び出そうとした。
が、俺が辿りつく前に自動ドアが再び開き、
「すみません、ちょっと急いでるんですけど、この携帯で使える充電器って……!」
駆け込んできたホステス風の派手な女性客に、結果としてそれを阻まれてしまう。
俺は急く気持ちを押さえ、端的に接客すると、裏手にいるもう一人の店員に向かって声をかけようとした。
「……いや、もう無理か」
急いでいるといった女性客は、買い物を済ませるなりすぐに店を出て行ったが、それでも時間にして5分近くは経過している。
入れ替わるようにして入ってきた客は、彼女だけじゃない。
その後も、数回扉は開き、現在も店内にはカップルらしき二人の客が残っている。
(さすがに、もういねーよな)
俺は彼らがまだ精算する様子がないのをいいことに、再度カウンターを抜け出した。
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