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「…あぁ、起きたのか」
「起きたのかじゃねーだろ…!」
俺が急に動いたことに驚いたのか、一瞬だけ間を置いて、それでも然程の反応も見せず、彼は静かに手を退いた。
「こんなとこで寝るより、ベッド使えよ」
「え…ヤ、そうじゃなくて……」
言うなり彼は徐に立ち上がり、俺の腕を掴んで立つことを促してくる。
いったいなんなんだと、こっちが妙に戸惑う結果になっているのは、俺が起き抜けだからだろうか。
いや、違う。彼が相変わらずマイペースな所為だ。
「…眠いんだろ」
そうは言っても、向けられる言葉を否定は出来ず、俺は不本意なくせ、大人しく彼に従って腰を上げる。
腕を引かれるまま寝室に向かい、捲られた上掛けの中に押し込まれて、
「……え、な、アンタも寝るの?」
けれど続けて相手もベッドに乗りあがれば、言わずにはいられない。
彼が長身だからなのか、ベッドのサイズは、確かにシングルサイズじゃない。
正直俺と彼が並んで寝るくらい、余裕なくらいの広さがある。
だからって、ハイそうですかとあっさり承諾することも俺にはできない。
(…嘘だろ)
そんなことになるくらいなら、俺はソファで十分だ。
そう言おうとした俺の口を、
「……今更やっぱ止めたとは言わせねェよ」
そう告げた彼の唇がそっと塞いだ。
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