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窓からの光は遮光カーテンに遮られ、室内の明度は深夜と錯覚しそうな程に暗い。
それでも目が慣れれば相手の顔や姿は十分に知れるし、それを理由に俺は間接照明ですら点けることを許可しなかった。
「…、……っ」
押し殺した自分の吐息が、やけに耳に近く感じて、それだけで羞恥に身が竦みそうになる。
先に釘を刺された所為で、逃げることも拒むことも出来なくなった俺は、先刻の不意打ちのようなキスの後、結局されるままにベッドの上へと押し倒された。
動揺のうちに上着の前を外されて、気が付けばTシャツの裾から掌が滑り込んでいた。
素肌の上を辿るだけの動きにすら心臓がうるさく脈打って、過剰に身体が強張った。
「直人……力抜けよ。怖がらせるようなことはしねーから」
「…ンなこと、言ったって……」
怖いものは怖い…と、思っても口には出来ない性分がこんな時ばかりはもどかしい。
彼は組み敷いた俺を真っ直ぐに見下ろして、所在無げにたじろぐ俺の目元に唇を寄せた。
「――お前が欲しい」
と、囁くような呟きが落ちてくる。どくん、と一際大きく鼓動が跳ねた。
逸らしていた視線をそっと戻すと、
「お前が好きだ」
彼はいままでに見たことも無いような柔らかな笑みを浮かべて見せた。
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