24...一線*【Side:三木直人】

6/7
前へ
/354ページ
次へ
 彼の手が、下方へと伸びて、下着ごと俺の衣服を摺り下げる。  抗いたいと思うのに、それもできない。彼のひたむきな眼差しや仕草は確かに俺の胸を打って、その全てを手放したくないとさえ思い始めていた。 「…あ、……っ」  気恥ずかしさばかりが先に立ち、どこを見ていいんだか、取り留めない視線が中空を彷徨う。  と、彼の手が俺の下肢へと触れて、次いで温かな掌に屹立を握りこまれると、知らず腰がびくりと跳ねた。  指先が絡みつき、緩やかにその手が上下する。  勝手に漏れそうになる吐息を堪えながら、俺は手元のシーツを握り締めた。 「直人…」  胸元から顔を上げた彼が、切なげに俺の名前を口にする。  応えるように彼を見ると、その眼差しは酷く熱っぽく揺れていて、迂闊にも心情が煽られる。 「…山、端…さんっ……」  彼の手の中で、俺は既に雫を溢れさせていて、時折響く微かな水音が一層気分を高揚させた。  *  *  * 「――逸樹って呼べよ。直人」  そう言って両脚を抱え上げられた時は、流石に茫洋としていた意識も一瞬正気に戻りかけた。  それでも、やっぱりイヤだとは言えなくて、…言う気にもなれなくて。  俺は自分でも過剰だと思えるほどの羞恥に肌を染めながらも、そっと彼へと手を伸ばした。
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1832人が本棚に入れています
本棚に追加