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彼の手が、下方へと伸びて、下着ごと俺の衣服を摺り下げる。
抗いたいと思うのに、それもできない。彼のひたむきな眼差しや仕草は確かに俺の胸を打って、その全てを手放したくないとさえ思い始めていた。
「…あ、……っ」
気恥ずかしさばかりが先に立ち、どこを見ていいんだか、取り留めない視線が中空を彷徨う。
と、彼の手が俺の下肢へと触れて、次いで温かな掌に屹立を握りこまれると、知らず腰がびくりと跳ねた。
指先が絡みつき、緩やかにその手が上下する。
勝手に漏れそうになる吐息を堪えながら、俺は手元のシーツを握り締めた。
「直人…」
胸元から顔を上げた彼が、切なげに俺の名前を口にする。
応えるように彼を見ると、その眼差しは酷く熱っぽく揺れていて、迂闊にも心情が煽られる。
「…山、端…さんっ……」
彼の手の中で、俺は既に雫を溢れさせていて、時折響く微かな水音が一層気分を高揚させた。
* * *
「――逸樹って呼べよ。直人」
そう言って両脚を抱え上げられた時は、流石に茫洋としていた意識も一瞬正気に戻りかけた。
それでも、やっぱりイヤだとは言えなくて、…言う気にもなれなくて。
俺は自分でも過剰だと思えるほどの羞恥に肌を染めながらも、そっと彼へと手を伸ばした。
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