25...一喜一憂【Side:山端逸樹】

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 俺の記憶が正しければ、直人が下校するのは大体十六時半過ぎだ。  その頃に彼の学校へ寄ってみるのも悪くねぇかも。  ふとそう考えてから、思わず笑みが漏れる。  急に顔を見に行ったら彼は驚くだろうか。  いつもなら電話で一報入れて待ち合わせたりするのが常になっている俺たちだが、たまにはサプライズも悪くない。 (そういや、あいつ、今日はどうやって学校行ったんだろ)  直人の移動手段が原付なのは承知していた。雨降りの日にはそれが徒歩になることも。  天気予報では午後から雨模様だと報じられていたが、直人はそれを知っていて策を講じただろうか。  ふとそんなことを思ってから、不安になる。 (また濡れたりして風邪でもひかれたら面倒だよな)  熱に潤んだ直人の表情も艶っぽくて悪くないが、彼が辛い思いをするのは本意ではない。 (もし濡れて帰らなきゃいけねぇようだったら送ってやるか)  直人の通う大学と、俺の住むアパートはそれ程離れちゃ居ないし。  直人の帰宅先を勝手に自分の家、と決めてから俺は口の端に笑みを浮かべた。  久々に直人の温もりを感じられるかな。  そう、思って。
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